ネグレーヌvs.メリッサ

メリッサの宿、食堂。グインの街の人々が、一同に会している。
鍛冶屋の主人、グラスコが場をとりしきっているようだ。
グラスコ「今回のネグレーヌとメリッサの対決は、『ワインに合う豆腐料理』を題材といたしました。豆腐の材料、様式には、制限はございません。いっさい自由に取り組んで頂きます。」
グラスコ「それでは、ネグレーヌから、発表して頂きましょう…　こ　これは？」
ネグレーヌが取り出した料理に驚きをかくせないグラスコ。
ネグレーヌ「これが、ネグレーヌ側の豆腐とワインだ。どうぞ、召し上がれ」
ハナ「なんですって、これがネグレーヌ側の料理？これは…『豆腐の激辛あんかけ』じゃないの！」
ネグレーヌ「その通りだ。豆腐料理はそもそも和風のもの、ワインに合わせるには工夫をする必要があった。それは、辛味だ。人間は、辛味を味わうと水分がほしくなる。しかし、ただの水分ではいけない。カレーを食べたあとに、いくら水を飲んでも辛味が舌から抜けない経験があるだろう。
それは、辛味を感じる味蕾が無味の水によっては活動をやめないからだ。しかし、ワインならば違う。ワインに含まれるカフェインによって苦味を感じる味蕾が刺激され、辛味は抑えられる。それどころか、二つの味の絶妙な組み合わせが、より高い次元に味を高めるのだ。よって、これが至高の組み合わせなのだ」
ハナ「でも、これはメリッサさんの得意料理じゃないの！それを…」
グラスコ「何はともあれ、頂いてみましょう。…こ、これは…豆腐にかかった激辛あんによって刺激された味蕾を、ワインが優しく包み込む！こんな組み合わせがあったとは…」
ネグレーヌ「それだけではない。この豆腐、そしてワインは、チョモ貿易によって運ばれた最高品質のもの。豆腐は15代続いた豆腐専門店の、マメの精をすりつぶした豆乳によって作られた豆腐、ワインは1970年物の最高峰、「フォリア・シャルルマーニュ」だ。この組み合わせでなくてはこの味は出せない。ハナは何か疑っているようだが、これは盗用というのではない。本家取りと言うのだ！」
ハナ「なんてこと…　こんな高級食材に、勝ち目はあるのかしら？」
メリッサ「大丈夫よ、ハナ様」
グラスコ「さあ、それではメリッサに発表して頂きましょう」
ハナ（ああ、やっぱり『豆腐の激辛あんかけ』と『高級ぶどう酒』…　でも、いくらこの取り合わせが最高といっても…）
ネグレーヌ「わあっはっはっは。なにかと思えばワシと同じ料理か。それではお前は勝てん！この最高品質の豆腐とワインの前では、お前の料理など…」
グラスコ「いや、ちょっと待ってください。これは…これは信じられないうまさだ！」
パァン
思わず拍手を打つグラスコ。
ネグレーヌ「な…なんだと　こんなものがうまい訳は…」
グラスコ「さあ、メリッサさん、説明してください！この味の秘密を！」
メリッサ「秘密なんてありませんわ。ネグレーヌさんの敗因はたったひとつ…たったひとつのシンプルな答えよ。
『豆腐とワインに旅をさせちゃいけねえ』　これよ！」
ハナ「そうか！メリッサさんはモルドガーデンという最も近い産地から（以下略）」



いくら土曜日だからってやりすぎたと思う